2月27日 ―早稲田大学合格発表―
耳を疑った。
「おめでとうございます。合格です。」
受話器の声は確かにそう告げていた。信じられなくて何度もかけ直した。
それでも信じられず、友人にも頼んで、確認してもらった。もちろん同じ機械音声が繰り返されるだけであった。
手ごたえから早稲田は無理だったと諦めていたが、終わってみれば、2学部とも合格だった。
呆然とする自分。狂喜乱舞する家族や友人。
「あぁ、自分のことをこれだけ思ってくれる人がいたんだなぁ」と、受験を終えたという安堵感とともに、感謝の念が押し寄せた。思えば、自分は色々な人に支えられ、このような結果を残すことができた。
ほんの1年前、思いつきに近い形で始まった大学受験。とてつもなく長く、あまりにもあっという間な1年。受験を決意した1年前と同じように車窓を流れる景色を眺めながら、しばし合格を噛みしめていた。
早春の風の中、こうして私の大学受験は幕を閉じた。
今日(こんにち) ―受験を振り返って―
最初は右も左も分からなかった受験。半年間苦しみ続けた不眠症。100万円の貯金も尽きた。人間関係でも色々あった。
初めて自分で下した、人生の大きな決断と言えたかもしれない。
私にあったのは夢や理想や自信というキラキラした力ではなかった。
不安、焦り、後悔、そういったドロドロした力しかなかった。しかし、ドロドロした力だからこそ、不眠症の中で勉強に行き詰まり、なげやりになりそうになった時も、強力な粘りとなって弱い私を最後まで机に向かわせたのだと思う。
周囲から見たらたかが受験だろう。
合格したと言っても、周囲からは4,5年も遅れたステップである。
しかし、私にとっては間違いなくこの受験が人生における最大の分岐点であった。
そうして得た知識や学歴、目標への道筋を明確にする計画性・効率性、やりとげるための根性・執念は、その後の人生の重要局面で幾度となく私を助けてくれた。
本気で臨む受験というのは、その過程、結果ともに、その後の人生を大いに左右すると信じている。
だからこそ私は、1人でも多くの生徒が各人の受験において、目的地に到達できるよう、より完璧に近い道筋を示せたらと思い、いまだに毎日、試行錯誤四苦八苦している。
そして生徒には、相応の苦しみは経験しながらも、受験などは最短距離で要領良くさっさと乗り越えて、その後の道筋を自分の頭で設計し、自分の足で歩いて行ける人間になって欲しいのである。
そんなことを考えながら、私は今日も教壇に立っている。
これを読み終えたあなたが、
「この人にできるなら、自分だって・・・」
と、受験に立ち向かい、乗り越え、その先のあなたのストーリーを自らの手で描いていくことを願って、この物語を終わりとする。
ご精読に感謝!!